志賀海研究社は安曇(あずみ)一族を中心とするマヤカシ魔術師ギルドである。
 アストラルも科学の一つであると考え、一般的な科学にも理解と知識をもつ。アストラル理解と魔術研鑽を重ね、他の科学とも融合を図りながら、より広く、より深く魔術を探究することが彼らの理念である。

 つい最近、「安曇科学研究社」から社名を変更し、同時に中核部である安曇一族内部の構造改革を行った。とある事件の結果、当代首長を含めた安曇の中心人物を操ることで長年に渡り安曇一族を支配していた、狡猾老獪の安曇八貌(はちぼう)が討伐されたためである。またこの事件により八貌が抱えていた過去のヤオヨロズとの因縁が安曇側においては解消されている。

 対外的にはアストラルを中心とする技術や物品の開発・製造によって利益を得ている。
 安曇一族のルーツ、また志賀海の商品への信用から大手企業とも取引があり、決して派手な組織でも巨大商社でもないが、アストラル方面への知識があるエグゼクであれば志賀海、もしくは安曇の名を知っているかもしれない。

 このギルドには安曇一族の他にも、マヤカシをはじめとして様々なアストラル関係者やマイナスナンバーたちが所属する。研究支援や講義が存在し、後進の育成にも力を入れている。ギルドに所属すること自体は難しくないが、知識の持ち出しや裏切りには厳しい。決して数は多くない契約時の誓約に違反すると、安曇の執行者によって迅速に追跡・処刑が行われる。

 志賀海研究社の中核を構成する安曇家は元々日本人である。当主が安曇泰一(たいいつ)であった頃、安曇八貌が起こしたヤオヨロズとの深刻な対立と、アストラルへの傾倒と理解の深さへの危険視、等々が原因で安曇は特権階級から追放された。安曇泰一が権力者層への復帰を望まずひたすら探究にうちこみ、アストラル理解と魔術研鑽を第一としたため、今でも安曇一族はそれを変わらぬ理念として掲げ、自分たちを日本人だと驕ることもない。しかし後述する特殊性から安曇は一族以外の魔術血統を軽視するきらいがある。また何をおいても魔術探求を第一に事を起こすため、時に手段を選ばないとして他の組織からは警戒されがち。

 安曇一族は奇跡的なほど能力の高い魔術師を輩出し続けている。以下、志賀海研究社の魔術師のうち、安曇の血統の魔術師を安曇の魔術師と呼ぶ。一族の者は婚姻の相手を遺伝子と星に決定され、時には科学技術のみによらない身体改造を受けることで、魔術師であることを強制される。安曇の魔術師は以下のような特殊性を備えており、この特殊性こそが空想のような理論をすら実践にするのだと一族の者は考えている。

 安曇の血統で遺伝し続ける魔術回路は、元々は突然変異によって生まれた特殊なものである。魔術回路は概念的な存在であることも少なくないが、安曇の魔術師は魔術回路の核を実体的に心臓付近に有し、またその核(以降、魔術核)を守るための物理的な生体保護構造(以下、保護構造)を肉体内外に伴っている。安曇の子はほとんどが遺伝子操作によって魔術核と保護構造を有した状態で生まれてくるが、その二つの器官の自然発生は志賀海の技術をもってしても未だ完全にはコントロールできない。

 もし安曇の子に保護構造が遺伝しなかった場合、培養で生み出された保護構造を植え付けられるため、安曇の一族は全員、生まれながらに、もしくは後天的に、必ずヒルコである。魔術核を持たない子や、安曇の血統者として十分な魔術回路を持ち合わせない子も産まれている可能性があるが、詳細は秘匿されている。このような秘匿情報や研究所で得られる知識には厳重なロックが施されている。安曇が許可していない者(主に外部者)による不正アクセスや、一部の者だけが保有を許された情報への不正アクセスを強行すると、自動で強力なファイアウォールによる妨害が行われ、アクセス者の電脳に深刻なダメージが実行される。

 また、このような秘匿が行われていることや、事件に関与した安曇の魔術師の死体が必ず復元・検死不可能な液体の状態で発見されることなどから、現時点では安曇一族の特殊性は外部には知られていない。安曇の魔術師の身体が死後間もなく融けて液状になるのはそういった魔術を自身にかけているからだとも噂されているが、実際には生体エネルギーを魔術エネルギーに変換する魔術核の特性によるもので、安曇の魔術師が望んで自らの死体を損壊させているわけではない。

 安曇の魔術師のうち厳しい試験をクリアした者には「命(ミコト)」の称号を冠したコードネームが与えられ、さらに本家筋の魔術師のコードネームには安曇の祖神である「綿津見(ワタツミ)」の名が与えられる(例:菖蒲綿津見命/アヤメワタツミノミコト)。「命」は当代首長や安曇の中心人物らからの絶大な信頼と同時に、任務や研究における重大な責任を与えられている。有事の際の指揮や裏切り者への対処を行う執行者も多くは「命」が務めるため、戦闘能力が高い、もしくは知識や魔術がより戦闘に特化された「命」も少なくない。

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