ルゥキーへのお題は
・指を舐める
・誘われて手を取る
・赤い跡
・口移し
です。アンケートでみんなが見たいものを聞いてみましょう
shindanmaker.com/590587


 いつかのように勝手に傷が癒えることはない。
 無論混沌は治りを早め痛みを誤魔化してくれはするが、呪われた混沌の申し子たる彼の青年に与えられたような急速な回復力を伴っているわけではなかった。右腕を魔物の爪が少し深く抉ったようだ。溢れ出て指に滴る混沌の血液を舐め飲み込む。
 傷口へと唇を当て、溜まっている赤を軽く吸い上げた。相変わらず妙な味がする。すうっと空気が頭へと抜けていくような、滑らかに下に馴染むような。人の血液とは異なる混沌の滴だ。
 ふと視線を上げると紅と目が合う。それは心配そうではあるが同時にどこか興味を浮かべていた。
 「おいしいのか?」
 吸い上げた血液をなんとなく嚥下したところで首が傾げられた。
 「む?」
 考えたこともなかった。特に意味も目的もなく飲み込んでいたが、味に注意を払ったことなどない。かといって口内の残滓を味わってみたところで、美味ではないが不味いこともなかった。
 舐めるという行為自体もある種の習慣のようなもので、答えに困った男はそっと顔を近づける。
 「…………ん」
 そっと唇を当て、滑り込ませた二股の舌先で触れた。直接舐めるには濃いだろうが、唾液で薄められた血液の匂いならそれほどきつくはないだろう。
 最早慣れてしまった行為を手早く終えて唇を離す。無意識に伸ばされていた手をとられていたことに気づくと男はやや決まり悪そうに視線を外した。
 「どうだ?」
 一応感想だけは尋ねる。他人の血液の味など好まれるはずがないと、どんな回答でも笑って流すつもりで。
 出血の止まった赤い傷を眺め、それからまた首をかしげて。好んで舐めるほど美味しいものであるとは流石に認められなかったようだが、と、答えあぐねている青年の前で男はただ顔を苦笑に緩めていた。



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