キールゥのBL本のタイトルは「花冠を君に」で、帯のフレーズは【 憧れが恋に変わったのはいつだったっけ 】です。
#あなたのBL本
shindanmaker.com/670596

 赤い花が咲いているのを見てまず、似合うと思った。
 黒の毛並みも愛らしい紅眼の君に。
 一輪だけそっと摘み取り両手で包むようにして持ち帰る。唐突にこのようなことをしては驚かれるだろうか、否、たまには悪くなかろう。
 ただいまと帰りを知らせる代わりにそっと近づいた。
 「キース」
 振り向き何か言いたげな唇に指を当てる。ふに、と柔らかく押し返される。耳の横、髪にそっと差し込むように花を飾った。
 「む、これは?」
 「やはり似合っておるな。そうと思うていただいてきたのよ」
 眺めて微笑う。それだけのことが、尊い。
 「それでは私はもう一度外へ出てくる」
 いつまでできることか分からない。次に戻ってきたときまた同じように笑むことのできる保証がない。
 ――私はちゃんと愛せているだろうか。
 まだ残っている人らしい感情がこのまま存続するものだという保証がない。
 そんな胸騒ぎの原因は僅かな違和感。
 思い出せないのだ。
 どうして、いつから。
 「幸せ」という言葉を用いるべき温かいものを、確かに彼の傍で感じるようになったのかを。
 いってらっしゃいと見送る声に応え、外へ出て扉を閉めると暫し空を眺めていた。
 手には先程の花の香り。彼の反応を思い返して、空へ向けられていた金は満足げに緩んで前へと。
 「大丈夫。一緒ならば私はまだ私のままでいられよう」
 そう独りごちると不安を奥底に押し戻して歩き始めた。





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