===第2話===

 匂坂村で暴走していたオーヴァード、
 ブエル・ガルドラボークが香山市支部の病室で目を覚ます。

 UGNは彼がレネゲイドビーイングであること、
 また人々やUGNに敵対しない存在であることを認め、
 彼が任務や生活に慣れるまで任務を共にするようにキミたちに命じた。

 季節は移ろい、春。
 匂坂村で戦った四人とブエルは、
 今度はチームメイトとして香山市支部から指令を受ける。

 「EXレネゲイドの疑いのある、古太刀を回収してきてくれ」

 それはとある屋敷で保存されているという古い刀で、
 レネゲイド反応に気付いたエージェントによって
 回収か保護が進言され、数年間監視対象となっていたものだ。

 この数日、その古太刀が纏うレネゲイド濃度が急激に上がっているという。

 「既に藤堂家の当主には話をつけてあるから、キミたちは
  その古太刀を受け取って支部まで持ってきてくれればいい。

  ……簡単に聞こえるかもしれないが、曰くつきのシロモノだ。
  迂闊にゲートをくぐらせることも躊躇われるほどの、な。
  どうか油断することなく、無事に帰還してくれ」
 
 キミたちのチームには藤堂家の子息がいる。
 屋敷までの道も、屋敷の構造も把握した彼がいるのだから、
 その任務は実際にそれほど困難を伴わないもののはずだった。

 しかし、キミたちが到着した時には既に、遅かった。

 何者かによって破壊されかけた屋敷。
 燃え盛る炎。
 倒れ伏すたくさんのヒト――だったもの。

 そして、まだ形の残っている建物の中で、
 少女が一人、「その」古太刀を手にしていた。

 「皆さんはその子を援護してください!」

 不気味なナニかの前に立ちはだかって、
 チーム一番の実力者、"ロッソ・ジーリョ"三倉百合音が叫ぶ。
 
 「彼女を守って、支部まで連れ帰って。
 大丈夫です。私も隙を見て撤退します!」

 キミたちの行く手には、幽霊のような、影のような、
 異形の数々が立ちはだかって、
 屋敷の門までの短い道程を長いものに感じさせる。
 "アルジェンタ・トルメンタ"五十嵐幸雄が氷の盾を展開しなければ、
 ひょっとしたらどこかで火に巻かれていたかもしれない。

 それでもキミたちは必死に炎と異形を振り払って、
 藤堂家の屋敷の敷地から離れる。
 異形たちは屋敷の外までは追ってはこないようだった。

 そこで一息ついた君たちが、
 一人残る"ロッソ・ジーリョ"を案じて振り向くと――

 その様を凄惨と以外になんと形容できようか。

 立っていた全てが倒壊し、木の爆ぜる音だけが微かに鳴った。




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