「そんなところでなにをしているんですか?ぼくにたおされたいんですか?いわないとさしちゃいますよ」
 今剣の怒気を纏った声に続けて繰返し噎せる別人の声が聞こえた。もし敵なら今剣が問答無用で「倒して」いるだろうから少なくとも敵襲ではないらしい。
 「ぬすみぎきですか?」
 「違ぇよ!」
 ん?
 「じゃあそこでなにをしていたんですか?」
 「なにもしてないっつーの!待、てっ……分かったから危ねぇもんしまってくれ!」
 「うそですか?ばかなんですか、しぬんですか?」
 この声は和泉守兼定……か。言葉遣いを除けば悪い男ではないことは重々承知なのだが、「闇討ち、暗殺、お手の物!」と言う堀川国広と前の主人が同じとあっては油断ならない。場合によっては俺を闇討ちか暗殺する魂胆かもしれない。
 「むほんですか!」
 すまない今剣、さっきのは冗談だ。
 ばつが悪そうな顔の和泉守兼定を大福箱の前に座らせて尋問を開始する。謀叛の可能性は無いとしても何をするつもりだったか分かったものではない。チームじじいの入れ知恵でここで待ち伏せしていた可能性も無きにしも非ず。
 「アンタを待ってただけだよ、ほら!」
 チームじじい、冤罪。
 押し付けるように彼が手渡してきたのは――艦載機?
 「あんた、ってだれですか?あるじさまのことですか」
 「決まってんだろう。何か文句があんのか」
 水上偵察機のようだ。ということは瑞鳳が飛ばしたものではないだろう。ここに艦載機を飛ばすほどの緊急の用事でもあったのだろうか、それに乗組員の妖精さんはどこに行ったというのだ、まさか水偵が勝手に飛んできたというホラー現象ではあるまい。
 「おい卑怯名刀カネサンダー」
 「んだと!」
 聞いていた今剣が吹き出した。
 「何故隠れてた?」
 「あ、っと……それはだなあ」
 カッコよくて強いが頭は悪そうなヤンキーは首の後ろを掻きはじめた。
 「これが落ちてたんでどうしようかと思ってよ、歌仙に見せに行ったらアンタに渡すべきだっつーんだが、来たらいねぇし……その……戻ろうと思ったらアンタとガキが、ごふっ」
 今剣が満面の笑みを浮かべながら目潰しマンの背中に膝蹴りを入れた。うん、今のは完全に和泉守兼定が悪いがやめて差し上げろ。
 「悪さをしていたと思われるのが嫌で隠れたと?」
 「いずみのかみさんは、ばかですね」
 イケメンヤンキーは何か言い返そうとして何も言えず黙り込んだ。

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